「原論研究者にとって経済原論をまとめるということは、ある意味最終目的であるといえよう。原論のすべての領域で論者の議論を展開する必要があるからである。とはいえ、本書において、すべての領域で十分な展開がなされているかということについては、はなはだ自信はない。ただ、これまで原論を考えて腑に落ちないと思っていたいくつかの論点については、自分なりの議論が展開できたのではないかと思っている。本来は、そうした各論を個別論文としてまとめて、批判を受けた上で原論をまとめていくべきであろう。とはいえ、気がつくと無為のうちに齢もずいぶん重ねてしまった。そこで、むしろ、原論という形で議論を提起し、個々の論点についてはそれから論文でさらに考究したいと考え、本書をまとめようと思い立ったわけである。私は東大経済学部で経済学を本格的に学ぶようになってから、山口重克教授(現在名誉教授)の指導を受けてきている。本書の内容はすべて山口『経済原論講義』(東京大学出版会、一九八五年)から学んだものといってよい。マルクスの経済学大系を宇野弘蔵が大きく組み替え、その方法を山口はさらに徹底したといえる。本書では、山口の議論をさらに深化させるとどのような原論になるのかということを模索した。もちろん、本書にあるであろう瑕疵はすべて私の責任によるものである。私なりに理論の発展を追究したわけであるが、それがどの程度成功しているのかを今、自ら判断することはできない。諸氏の批判に俟ちたい。」(本書「あとがき」より)【著者プロフィール】菅原 陽心(すがはら・ようしん) 東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。 新潟青陵大学教授 新潟大学名誉教授 著書: 『商業資本と市場重層化』(御茶の水書房、1997年) 『東アジア市場経済:多様性と可能性』(共著、御茶の水書房、2003年) 『新版 市場経済』(共著、名古屋大学出版会、2004年) 『グローバル資本主義と企業システムの変容』(共著、御茶の水書房、2006年) 『中国社会主義市場経済の現在』(編著、御茶の水書房、2011年)